修復作業② 作品内部の状態を確認

作業台にウレタンクッションを敷き、作品を丁寧に横倒しにして、作品内部と底面の状態を確認していく。

作品内部には、右手から水を出すための配管が入っていた。それがどうなったのか気になっていたが、配管は取り外された状態で返ってきた。

作品設置時にはこのように、作品内部の右手部分でステンレスのフレキシブルホースを固定し、現地で台座に備えつけられたメンテナンスハッチを使って、作品内部の配管と建物側からの配管とを接続して納品した。

これは2020年の作品制作時の画像になるが、作品内部に角度調整可能な放水口を固定して、フレキシブルホースと接続。

現地で事前に行われた放水テストで、放水角度を調整してからアトリエに戻り、右手のパーツを固定した。

※2020年の作品制作時の画像

ノズルの飛び出し部分をカットしてから、右手パーツ固定。その後に溝とネジ穴を埋め、表面を平滑に整え、再塗装を行い作品を完成させた。

※2020年の作品制作時の画像。

作品内部からフレキシブルホースやノズルの固定・調整作業などを行うのは難しい、という判断から、このようなプロセスで制作した。

「渋谷猫張り子」は店舗設計の段階から関わり、建築家チームと協力して、台座の形状や、台座に備えつけてあるメンテナンス用ハッチのサイズなど、作者としての意見を出しながら制作を進めてきた。放水に関する機構や配管など、関係者と事前の設置テストを含む緊密なやりとりをしながら、最終的には全て作者の責任で決定し、完成させた作品である。

また作品搬入時には、店舗の扉と作品との隙間が僅か数cmしか無かったために、作品が最少幅になる角度を計算し、作品を傾斜させる治具に固定して搬入を行った。

こうした作品設置にまつわる留意点は作者しか知り得ず、本来であれば作者にしか、万全な状態での撤去はできない作品だった。

作品の取り外しや撤去作業が作者の立ち合いはおろか、承諾を得ることもなく、第三者の手によって行われたことは、非常に遺憾である。

今回の作品の無断撤去時には、おそらく
①台座にあるメンテナンスハッチから作品固定のボルトと、台座内部にある放水用配管の接続を外す。
②内部配管付きの作品を台座から取り外す。
③その後に作品内部の右手から伸びる配管を取り外す。
という3段階のプロセスで、作品と内部配管を取り外している。

③の作品内部の配管を取り外す作業は、狭い作品の内部に入り込まないと出来ない特殊な作業なので、作品内部が空の状態で返ってくることは想定していなかった。

当初は、「作品の再設置を行う」という回答を得ており、作品の無断撤去時には、まだその回答は覆されていない状態だった。

作品内部の状態を確認してみて、なぜ制作時には想定されていなかった特殊な作業をわざわざ行い、内部の配管を取り外していたのか、大きな疑問を感じた。

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