カッター痕の補修を進めていく。
無事にラッピングシートの剥離が完了し、傷の記録も済ませたので、傷の補修作業に進む。
作業の前に、この作品の塗装について説明しようと思う。
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この作品の塗装面を断面図で説明すると上から、
・自動車用ウレタンクリア(艶出し)を厚く塗装したクリアコート層
・自動車用塗料などを使った着色カラー層
・自動車用ウレタンホワイトを塗装したベースカラー層
・自動車用ウレタンサーフェイサーを厚く塗装したサーフェイサー層
・ガラス繊維で強化されたプラスチックのFRP層
という5つの層から成り立っている。
このうち一番下地のFRP層が最も厚く8mm前後、色をつけている着色カラー層が最も薄く0.1~0.2mmとなっている。
傷の補修をしていくにあたり、「どのくらいの深さの傷か?」によって補修の作業工程が変わってくる。
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①のようにクリアコート層で傷が止まっている場合は、傷がある程度平滑になるよう研磨し、ウレタンクリア(以下、クリア)を吹くことで補修できる。
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傷の凹みを無くするために何度かに分けてクリアを吹いて、研磨を行うが、基本的な工程は研磨とクリアの繰り返しだけで済ませられる。
一方で、④の傷のようにFRP層まで傷が深く入ってしまっている箇所は、パテ埋め、サーフェイサー塗装、ホワイト塗装、着色塗装、クリア塗装と5つの工程が必要になる。
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各工程で研磨や複数回の塗装が必要になるが、基本的には5セットの工程を踏む必要がある。
これから傷の補修作業を記録していくが、傷の深さによって工程が変わってしまう。そのため、なかなか直らない傷と、ある程度の作業で回復する傷とが出てくると思う。何度も出てくる傷はそれだけ「深い傷」ということになる。