作品の状態の確認と記録が出来たので、作品改変に使われたラッピングシートの除去をはじめる。
ラッピングシートなどの品番については、回答書(こちらの質問に対して、作品改変を許可した企業が返答したもの)により、既に判明していた。
ラッピングで使用されたシートは「3M™ プリントラップフィルム IJ180mC-10」
https://multimedia.3m.com/mws/media/1510267O/product-ij180mc.pdf
このシートの上から「3M™ スコッチカル™ オーバーラミネートフィルム IJ4117N」
https://multimedia.3m.com/mws/media/1028580O/product-ij4116n&ij4117n.pdf
をラミネートして耐候性を高めている。
ラッピングの接着に使われたのは
「3M™ ダイノック™ フィルム 副資材 プライマー DP-900N3」。
https://multimedia.3m.com/mws/media/1171624O/pb-neo-013.pdf
修復にあたり、改めてこれらの材料を調べ直してみた。フィルムはフッ素系防汚加工がされたもので、このフィルムとシートと組み合わせることで、強い屋外耐候性を有している。また、接着剤は溶剤系で特に強い接着力を必要とする場合などに用いられる。
プリンターを用いて作成するラッピングの屋外耐候性としては、最強に近い部類の組み合わせになっている。
このことから改めて、この作品の改変が一時的なものではなく、永続的な改変を意図したものだと判断できる。
作品の確認作業で判明した、ラッピングシートが浮いている箇所から、ラッピングの除去を行う。
ラッピングが作品本体から浮いた箇所ではあるが、傷つけられた作品の表面に、さらなるダメージを与えることは避けなければならない。
そこで、ヒートガンで加熱を行い、粘着性を弱めながら慎重に少しずつラッピングを除去していく。
ラッピングシート剥離の際に作品本体にダメージが及ばないよう、慎重に作業を進めていく。
神経を使う作業を、ひたすら繰り返している。